2026年8月中旬、米国の大口投資家が4〜6月に何を売買したかを示す「13F」が出揃いました。バークシャー・ハサウェイは14四半期ぶりに買い越し。一方、リーマンショックを言い当てたマイケル・バーリ氏は半導体セクター丸ごとに売りを積んでいます。
世界最高クラスの投資家が、同じ相場を見て真逆に賭けている。割れているのは、ほぼ「AI」の採点だけです。新NISAでS&P500やオルカンを積み立てている方の口座も、上位はAI関連の巨大テックと半導体。彼らの採点は、回り回って私たちの評価額に流れ込んできます。
この記事でわかること
- アックマン、パブライ、バーリ、孫正義、バークシャー。5枚の答案用紙の中身と「途中式」
- 5人が何を恐れ、どこで勝負しているのか。答えではなく「採点基準」を盗む方法
- 13F公開から1か月、9月下旬の相場で彼らの賭けはどうなったか。日本の私たちの口座への翻訳
マネトレ大学学長の尾崎が運営するYouTubeチャンネル「おーちゃん【元外銀マン】」でも解説した内容に、ゴールドマン・サックスの最新レポートと今週の市況を加えてお届けします。先に言っておくと、大物の売買を丸写しするための話ではありません。
目次
- 1 結論:5枚の答案用紙を1枚の表にすると
- 2 まず前提:13Fは「途中式が省略された答案」
- 3 1枚目:ビル・アックマン|アルファベットを売り、「AI時代の料金所」を買った
- 4 なぜ取引所と指数会社なのか
- 5 アルファベット全売却の真意
- 6 2枚目:モニッシュ・パブライ|誰も見ない石炭と海底油田だけを持つ
- 7 2026年に石炭?が正解になる理由
- 8 様子の違う新規銘柄「カスピ」
- 9 3枚目:マイケル・バーリ|「今の指数は買っていいのか」に喧嘩を売った男
- 10 ファンドを畳んだ後の「省略された途中式」
- 11 「循環金融」とは何か
- 12 ただし、全勝ではない
- 13 4枚目:孫正義|13Fの外にある「オープンAIへの全ツッパ」
- 14 5枚目:バークシャー|3年半ぶりに「売るより買う」に転じた
- 15 アックマンが売った株を、バフェットが買った
- 16 住宅と航空、そして自社株
- 17 13F公開から1か月:9月下旬の相場で賭けはどうなったか
- 18 私たち個人投資家はどうするべきか
- 19 まずは無料LINE登録で特典をGET
結論:5枚の答案用紙を1枚の表にすると
忙しい方のために、先に結論です。
| 投資家 | 4〜6月の主な動き | AIへの姿勢 | 持ち帰りメモ |
|---|---|---|---|
| ビル・アックマン | アルファベット全売却→Meta・MS・Uber買い増し。ICE・S&Pグローバル新規 | 強気だが「値段次第」 | 確信は割高を掴む免罪符ではない |
| モニッシュ・パブライ | 石炭・海洋掘削のほぼ2業種。カザフのフィンテックをお試し | 直接は買わない | 人気のない場所で現金を探す |
| マイケル・バーリ | 半導体ETF・エヌビディア・マイクロンを空売り | 全力売り | 群衆を疑う。手法は真似しない |
| 孫正義(ソフトバンク) | TSMCを71%売却。資金はオープンAIへ(13Fの外) | 全力買い | 大きな賭けは両方向に切れる |
| バークシャー(バフェット) | 3年半ぶり買い越し。アルファベット366億ドル、住宅建設を丸ごと買収 | 「値段次第」で買い | 10年単位で考える |

共通点は1つ。全員が値段と現金にはっきり厳しくなったこと。違いは、AIをどう採点したかだけです。ここから1枚ずつ見ていきます。
まず前提:13Fは「途中式が省略された答案」
13Fは、約160億円以上を運用する機関投資家に義務付けられた保有銘柄の開示です。四半期の終わりから45日以内に提出されるので、4〜6月の売買が8月中旬に公開されました。読むときの注意は2つです。
- 45日のあいだに、もう売っている可能性がある(13Fは過去の写真)
- 米国株の「買い持ち」しか分からない(日本株、空売り、オプション、未上場企業への出資、不動産は載らない)
この「省略された途中式」が、後半のバーリ氏と孫正義氏のところで効いてきます。
1枚目:ビル・アックマン|アルファベットを売り、「AI時代の料金所」を買った
この章のポイント
- 新規6銘柄:Netflix、Visa、Mastercard、ICE(NY証券取引所の運営会社)、S&Pグローバル
- 約3,000億円分のアルファベットを全売却。Meta・Microsoft・Uberは買い増し
- 「AIから降りた」のではなく、上がり切った銘柄から値段に余地のある銘柄へ乗り換え
なぜ取引所と指数会社なのか
パーシング・スクエアのアックマン氏は、少数銘柄に集中し、コロナ直前に約44億円の下落保険で4,200億円を得た伝説の持ち主です。今回の新規銘柄で面白いのが、ICEとS&Pグローバル。日本で言えば、東証を運営するJPXと日経平均を算出する部門をまとめて買ったような動きです。
この2社は「AI時代の料金所」になり得ます。ICEはAIエージェントが自社の金融データにアクセスする接続口を用意し始め、S&P500のリアルタイムデータも算出元の許可なしには使えません。AIが金融に入り込むほど、通行料を払う主体が人間からAIに変わって料金所の売上は増える。どのAIが勝っても取りっぱぐれない、間接的なAI投資です。
アルファベット全売却の真意
アックマン氏は株主向け文書で「アルファベットの売却は逆張りではない。他のAI関連株の資金にしただけ」と説明しています。2026年に入ってからのアルファベットの上昇は巨大テックの中でも急でした。上がり切った銘柄から、まだ値段に余地のある銘柄へ。バーガーキングを持つレストラン・ブランズを14%買い増した理由も「同業より明確に割安な利益の17倍だから」でした。
持ち帰りメモ①:確信は、割高を掴んでいい免罪符ではない。アックマン氏はAIに強気だからこそ、市場がすでに完璧を織り込んだ銘柄を避け、間違えたときの逃げ場がある値段にこだわっています。その逃げ場を持っていないのが、私たち個人投資家の側です。
2枚目:モニッシュ・パブライ|誰も見ない石炭と海底油田だけを持つ
この章のポイント
- 保有はたった4銘柄、中身はほぼ石炭と海洋掘削の2業種
- AIデータセンターの電力需要で、閉鎖予定だった米国の石炭火力が延命
- カザフスタンのフィンテック「カスピ」に約2,400万円のお試し投資
2026年に石炭?が正解になる理由
パブライ氏はバフェットの手法を何十年も研究し、「見捨てられた業種で現金を生む会社を、正しい値段まで待って大きく買う」を貫いています。先進国の石炭需要は2008年から右肩下がりで、ウォール街の成長テーマに石炭が載ることはありません。
ところが世界では、アジアを中心に石炭消費は今も増加。さらにAIデータセンターの電力需要を支えるため、米国内で閉鎖予定だった石炭火力発電所の延命が始まっています。AIブームの二次的な波及効果が、一番不人気なところに来ている。マンガー氏が言った「いい投資の鍵は二次的な影響を読むこと」そのままの展開です。

様子の違う新規銘柄「カスピ」
原料炭のウォリアー・メット・コールは2年で約4割上昇し、一部利益確定。海洋掘削のトランスオーシャンも派手な賭けはせず、利益を少し刈り取って動かさない。パブライ氏らしい答案です。唯一の新規はカザフスタンの決済アプリ大手カスピ。年間3,000億円規模の現金を生む会社が、買収資金を貯めるために配当を止めた途端に株価が急落したところを拾いました。現金製造能力は変わらず、値段だけ暴落した会社です。
持ち帰りメモ②:人気のない場所でキャッシュフローを探すことを恐れない。アックマン氏は有名企業をまともな値段で、パブライ氏は無名でも退屈でもいい会社を激安で。スタイルは逆でも、2人とも「値段と現金」しか見ていません。
3枚目:マイケル・バーリ|「今の指数は買っていいのか」に喧嘩を売った男
この章のポイント
- 買いは売られすぎたバリュー株(ルルレモン、PayPal、Adobe)
- 売りは個別株ではなく半導体ETF「SOXX」丸ごと。エヌビディア、マイクロン、テスラ、パランティアにも売り
- 根拠は「循環金融」。ただし9月25日時点でSOXXは彼の売り水準を上回っている
ファンドを畳んだ後の「省略された途中式」
2008年の住宅バブル崩壊で「世紀の空売り」を成功させたバーリ氏は、2025年に自身のファンドを畳み、今は有料ニュースレター「Cassandra Unchained」で取引を公開しています。当局への報告義務なしに動いているため、以下はそこから推定されるポジションです。
買いは意外と普通のバリュー投資で、高値から7割超下落し利益の10倍を切ったルルレモンなど。売りの規模は別格で、最大は半導体セクターETF「SOXX」そのもの。7月24日にエヌビディア210ドル、マイクロン934ドル、SOXX536ドル前後で売りを追加したと報じられています。

「循環金融」とは何か
エヌビディアが稼いだお金をAI企業に出資し、そのAI企業がエヌビディアのチップを買う。売上が伸びて株価が上がり、また出資余力が生まれる。親が子どもに小遣いを渡して自分の駄菓子屋で使わせ、「今月も絶好調」と喜んでいるような構図です。8月にはウォール街のエヌビディア顧客向け5,000億ドルの資金調達枠組みを「ウォール街の見世物」「エンロンの匂いがする」と批判し、売りをさらに増やしました。
機関投資家も無関係ではありません。ゴールドマン・サックスのライアン・ハモンド氏は9月25日、ハイパースケーラーが投資を回収するにはAI利用者が年間約1兆ドルをAIアプリに支払う必要があると試算。受注残は1.5兆ドルあるものの、「支払う側」がまだ見えないという指摘はゴールドマンも共有しています。
ただし、全勝ではない
SOXXのプットは半導体が上がり続けたため一度損切り。図3の通り9月25日のSOXXは573ドルで、売り水準を上回っています。空売りは「下がるか」だけでなく「いつ下がるか」まで当てる必要がある。2008年のバーリ氏ですら3年早すぎて破滅寸前まで追い込まれました。
持ち帰りメモ③:群衆を疑う勇気を持つ。ただし手法は真似しない。多数派が間違えたとき、全員が同時に出口へ殺到する。その可能性を問い続ける視点は輸入しても、ポジションはコピーしない。
4枚目:孫正義|13Fの外にある「オープンAIへの全ツッパ」
この章のポイント
- 4〜6月にTSMCを71.5%売却、ビットコイン保有会社は全売却。2025年11月にはエヌビディアも全売却(58億ドル)
- 本当の賭けは13Fに載らないオープンAIへの出資。10月の追加分を含め累計約10兆円規模
- その期待と不安は、日経平均に影響の大きいソフトバンクグループの株価にそのまま流れ込む
バーリ氏と同じ「AIの本当の価値は誰にも分からない」という不確実性を見て、正反対の結論を出したのが孫正義氏です。答案用紙だけ見ると売りが多い守りの四半期。しかし本当の賭けは紙の外、未上場のオープンAIへの出資です。半導体設計のアームも約90%保有し、持ち分が大きすぎて売るに売れない状態。アリババの20億円が8兆円になった成功と、WeWorkで1.8兆円を失った失敗、その両方を生んだ「確信したら全ツッパ」がAIで極まった形です。

図4の通り、株価は2025年10月の高値から1か月で38%下げ、2026年5月に再び高値、今は6,150円。日本株をやっている方はもちろん、日経平均で相場観を作っている方にも直接関わる話です。
持ち帰りメモ④:大きな賭けは両方向に切れる。当たれば負け分を全部払ってお釣りが来る。外れれば逃げられない。
5枚目:バークシャー|3年半ぶりに「売るより買う」に転じた
この章のポイント
- 4〜6月の株式購入235億ドル、売却37億ドル。差し引き約200億ドルの買い越しは14四半期ぶり
- アルファベット保有366億ドル(第3位)。バフェット氏本人が「私が始めた」と明言
- 住宅建設テイラー・モリソンを68億ドルで丸ごと買収。デルタ航空54億ドル。自社株買い45億ドル

アックマンが売った株を、バフェットが買った
バークシャーは3年半、14四半期連続で売り越しを続け、現金を約4,000億ドル(約60兆円)まで積み上げてきました。その記録が4〜6月期に止まりました。一番の大物はアルファベット。6月に100億ドルの私募増資を引き受け、保有総額は366億ドル(約5.5兆円)に。かつてグーグル上場時に投資しなかったことを「しくじった」と悔やんでいたバフェット氏が、フォワードPER17倍以下まで待って動いたわけです。

住宅と航空、そして自社株
米国はおよそ400万戸規模の住宅不足。テイラー・モリソンの丸ごと買収に加え、D.R.ホートンやレナーも新規で買い、供給ギャップを埋める側に回りました。デルタ航空は第2位の大株主に。自社株買いは4〜6月で45億ドル、7月にも約35億ドルで「一番割安なのはうちの株だ」というメッセージとも読めます。売った側はバンク・オブ・アメリカ、キャピタル・ワン、クローガー、ニューコアなど。現金は3,655億ドルと3年半ぶりに減りました。
この「10年単位」を日本人が一番体感できるのが、2020年から持ち続ける5大商社株です。「なんで今さら商社」と言われた買い物は、三菱商事で約8倍。不人気なところで現金を生む会社を買ってひたすら持つ。パブライ氏のメモ②と同じ採点基準が、日本市場でも機能した実例です(図2右)。
持ち帰りメモ⑤:四半期ではなく10年単位で考える。14四半期、3年半も買い場を待ち続けられる胆力が複利の土台です。
13F公開から1か月:9月下旬の相場で賭けはどうなったか
- 米10年債利回りは9月24日に5.11%(2007年以来の高水準)。CME FedWatchの10月利上げ確率は約7割
- S&P500は7,743ポイントと高値圏だが、50日移動平均線を上回る銘柄は3割未満
- 半導体はバーリ氏の売りをよそに上昇継続。9月30日のマイクロン決算が次の分岐点
金利が5%を超える世界では、「割高を掴まない」「現金を生む会社を持つ」というバフェット・アックマン・パブライの共通項が効きやすくなります。どちらに転んでも、準備していた側に回れるチャンスが転がっている相場だと私は見ています。
私たち個人投資家はどうするべきか
5つの持ち帰りメモを日本の私たちに翻訳すると、やることは3つです。
- ポートフォリオの「AI濃度」を把握する。S&P500もオルカンも日経平均もAI・半導体の比重が高い。積み立てをやめる話ではなく、バーリ氏の警告が当たったとき評価額の何割が割れるかを先に知っておく
- 個別株派はスクリーニングの軸を「テーマの人気度」から「現金と値段」へ。料金所のように通行料が入り続ける業種、テーマから外れて放置された業種に目を向ける
- 時間軸を彼らに合わせる。バフェット氏は3年半待った。答案用紙は3か月ごとに出るが、彼らの勝負は10年単位。3か月の損益で振り落とされるのはもったいない
答えを写すのではなく、採点基準を盗む。今日の5枚の答案用紙は、そのための最高の教材です。ぜひご自身のポートフォリオの「答案用紙」を見直してみてください。
もちろん過去の実績は将来のパフォーマンスを担保するものではございません。本記事は特定銘柄や特定通貨の購入を推奨するものではなく、投資は自己責任でお願いします。
動画では実際の13Fの資料やチャートを見ながら解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
「バークシャーが3年半ぶりに買い越した」というニュース1本から、アルファベットを売った男と買った男、石炭を延命させるAIの電力需要、循環金融への警告、そして自分の積み立ての中身まで1本の線でたどり着く。この「連想ゲーム」ができるようになった瞬間、目の前の下落が調整なのか転換なのかを自分で判別できるようになります。
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参考情報:Berkshire Hathaway 13F(2026年8月14日提出)、CNBC(2026年8月15日)、Forbes(2026年8月15日)、The Motley Fool(2026年8月19日・9月19日)、Pershing Square 13F・TheStreet(2026年9月22日)、TheStreet(2026年7月24日)、Yahoo Finance(2026年8月11日)、SoftBank Group 13F・CNBC(2025年11月11日)、Goldman Sachs Ryan Hammond氏レポート(Yahoo Finance、2026年9月25日)、TheStreet・Charles Schwab 市場レポート(2026年9月24日)、Yahoo Finance 株価データ(2026年9月25日時点)



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