「Sell in May(5月に売れ)」という相場の格言を一度は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、こうした経験則、いわゆる「アノマリー」が本当に現代の投資で通用するのか、疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、マネトレ大学の尾崎学長が、個人投資家が知っておくべき5つの代表的なアノマリーを解説。最新データや機関投資家の視点を交えながら、その有効性と賢い使い方を明らかにします。統計データから占星術まで、相場の「クセ」を読み解くヒントがここにあります。
この記事でわかること
- Fear & Greed指数など、市場心理を読む指標の具体的な使い方
- 「Sell in May」が統計的にどの程度機能しているかの検証結果
- 「6のつく年」に起きやすいとされる、秋以降の相場急落リスク
マネトレ大学学長の尾崎が運営するYouTubeチャンネル「おーちゃん【元外銀マン】」で解説した内容を、動画公開後の市場データや海外機関投資家の最新レポートまで織り込んでお届けします。
目次
結論:相場の「クセ」を知り、有利なタイミングを掴む
| アノマリー | 概要 | 投資家への意味 |
|---|---|---|
| Fear & Greed指数 | 市場の「恐怖」と「強欲」を数値化した指標。一桁台は「極度の恐怖」を示す。 | 「極度の恐怖」は絶好の買い場となる可能性が高い。インデックスなど市場全体への投資タイミングを計るのに有効。 |
| Sell in May | 「5月に株を売り、9月のセント・レジャー・デーまで戻ってくるな」という格言。 | 統計的に5月〜10月は株価が伸び悩む傾向がある。新規投資を一旦待ったり、勉強期間に充てたりする目安になる。 |
| 年末ラリー | 12月は株価が上昇しやすいという、最も信頼性が高いとされるアノマリー。 | 年末のボーナス商戦や機関投資家のドレッシング買いなどが背景。10月頃の調整局面が年末に向けた仕込み場として意識されやすい。 |
| 西暦の下一桁 | 西暦の末尾の数字で相場の傾向を占う。「6の年」は秋まで上昇し急落する傾向があると言われる。 | 2026年は「6の年」。実際に機関投資家も年後半の調整を警戒しており、秋以降のポジション管理に注意が必要。 |
株式相場の「アノマリー(経験則)」は、明確な科学的根拠がなくても、多くの市場参加者の心理や季節性を反映し、統計的に優位な傾向を示すことがあります。これらを絶対の法則としてではなく「地図」や「天気予報」のように捉え、自身の投資戦略に組み込むことで、より有利な売買タイミングを掴む一助となります。
第1章:「恐怖で買え」は本当か?Fear & Greed指数の威力
この章のポイント
- 市場の過熱感・悲観を0〜100で示す指数
- 数値が10を下回る「極度の恐怖」は歴史的な買い場
- 動画撮影時点(29)から現在(19)はさらに「恐怖」へ
なぜFear & Greed指数は機能するのか?
最初にご紹介するのは、CNN Businessが公表している「Fear & Greed Index(恐怖と強欲指数)」です。これは、市場が過度に強気(Greed)なのか、あるいは過度に悲観(Fear)なのかを0から100の数値で示すセンチメント指標です。
動画撮影時点では「29」でしたが、2026年11月4日時点では「19」と、さらに「恐怖」の領域に近づいています。この指数は、単なる市場参加者の気分ではなく、以下の7つの客観的なデータから算出されています。
- 株価の勢い:S&P500と125日移動平均線の乖離
- 株価の強さ:NY証券取引所での52週高値と安値の銘柄数
- 株価の幅:上昇銘柄と下落銘柄の取引高
- プット・コール・オプション:プット(売る権利)とコール(買う権利)の比率
- ジャンク債需要:投資適格債とジャンク債の利回り差
- 市場のボラティリティ:VIX(恐怖)指数
- 安全資産需要:株式と国債のリターン差
このように多角的なデータに基づいているため、アノマリーの中でも特に信頼性が高い指標とされています。
「極度の恐怖」で何を買うべきか
過去のデータを見ると、この指数が10を下回り「Extreme Fear(極度の恐怖)」を示した局面は、後から振り返ると絶好の買い場であったことがほとんどです。例えば、2026年3月中旬に指数が一桁まで落ち込んだ後、S&P500は力強く反発しました。

では、こうした「極度の恐怖」の局面で何を買うべきでしょうか。個別銘柄を選ぶ自信がない場合でも、S&P500や日経平均などの市場全体に連動するインデックスファンドへの投資が有効な選択肢となります。市場全体が売られすぎている状況では、特定のセクターに賭けるよりも、市場の回復そのものに乗る方が確実性が高いからです。
もちろん、指数が一桁になることは滅多にありません。50を下回っていれば「恐怖」の領域なので、積み立て投資を始めるタイミングの目安として活用するのも良いでしょう。少なくとも「Extreme Greed(極度の強欲)」で高値掴みするリスクは避けられます。
持ち帰りメモ①:Fear & Greed指数が20を下回ったら、市場全体(インデックス)への投資を検討し始めるサイン。
第2章:最も有名なアノマリー「Sell in May」は今も有効か
この章のポイント
- 「5月に売り、9月の競馬開催日まで去れ」が元の格言
- 過去データでは5月〜10月のパフォーマンスは明らかに低い
- 2026年のS&P500も夏場は上昇が鈍化
「St Leger day(セント・レジャー・デー)」とは?
「Sell in May」は、アノマリーの中でも最も有名かもしれません。しかし、この格言には実は続きがあることをご存知でしょうか。原文は「Sell in May, and go away. Don’t come back until St Leger day」というものです。
直訳すると「5月に売って市場から去り、セント・レジャー・デーまで戻ってくるな」。この「セント・レジャー・デー」とは、毎年9月にイギリスで開催される歴史ある競馬レース「セントレジャーステークス」の開催日を指します。つまり、5月から9月頃までの夏場は相場が振るわないから、一旦休んで秋からまた始めなさい、という教えなのです。
データで見る「夏枯れ相場」の威力
では、この格言は本当に当たるのでしょうか。過去のデータを検証した調査があります。S&P500について、1995年からのパフォーマンスを3つのパターンで比較したものです。
- 通年保有:ずっとS&P500を持ち続けた場合
- Sell in Mayの実践:11月〜4月だけ保有した場合
- 夏場のみ保有:5月〜10月だけ保有した場合
結果は明らかで、最もパフォーマンスが良かったのは「通年保有」でした。しかし、次に良かったのが「Sell in Mayの実践」であり、最もパフォーマンスが悪かったのが「夏場のみ保有」でした。これは、5月から10月にかけてのパフォーマンスが、他の期間に比べて著しく低いことを示しています。

2026年のS&P500の動きを見ても、5月に高値を付けた後、夏場にかけては上値の重い展開が続きました。このアノマリーをどう活かすか。無理に利益を追う「ポジポジ病」を避け、この期間は投資を一旦休んで、秋以降の戦略を練るための勉強や分析に時間を充てる、という使い方が賢明かもしれません。
持ち帰りメモ②:「Sell in May」の期間は無理に投資せず、秋からの仕込みに備えて勉強や分析に時間を充てる好機。
第3章:月別の値動きのクセを読む「シーズナルチャート」
この章のポイント
- 各月(1月〜12月)の平均的な株価の動きを示したチャート
- 日米ともに5月〜6月、9月〜10月は調整しやすい傾向
- 12月は「年末ラリー」で上昇しやすいことが有名
日米で異なる「季節性」のパターン
Sell in Mayをさらに発展させ、1年を通した株価の季節的なパターンを可視化したものが「シーズナルチャート(季節性チャート)」です。これは過去20年など、長期間の月ごとの平均騰落率をグラフにしたもので、相場が調整しやすい時期や上昇しやすい時期の傾向を掴むのに役立ちます。
日米の市場を比較すると、共通点と相違点が見られます。例えば、日米ともに5月〜6月にかけてやや軟調になり、9月〜10月にかけては調整局面を迎えやすいという共通の傾向があります。一方で、1月の「ジャニュアリー・エフェクト」は米国でより顕著など、市場ごとの特徴も存在します。

最も信頼度が高い「年末ラリー」の背景
数ある季節性アノマリーの中で、最も信頼性が高いと言われているのが「年末ラリー(サンタクロース・ラリー)」です。これは、11月の感謝祭から年末にかけて株価が上昇しやすいという現象を指します。
この背景には、いくつかの要因が考えられます。
- 消費の盛り上がり:年末商戦への期待感が株価を押し上げる。
- ボーナス資金の流入:個人のボーナス資金が株式市場に向かいやすい。
- 機関投資家の行動:ファンドマネージャーが期末の運用成績を良く見せるための「ドレッシング買い」を行う。
多くの投資家がこの年末ラリーを意識しているため、9月〜10月の調整局面は、年末に向けた絶好の仕込み場として捉えられることが多くあります。相場の季節性を知ることで、短期的な値動きに一喜一憂せず、腰を据えた投資計画を立てることが可能になります。
持ち帰りメモ③:相場の季節性を知り、短期的な値動きに惑わされず、腰を据えた投資計画を立てる。
第4章:西暦末尾の法則「6の年」に起きる急落リスク
この章のポイント
- 西暦の下一桁の数字で、その年の相場展開を占うアノマリー
- 「7の年」はブラックマンデーやアジア通貨危機など暴落が多い
- 2026年「6の年」は、秋まで上昇しその後急落するパターン
「7の年」のジンクスと過去の暴落
月ごとの季節性よりもさらに長い、年単位のサイクルに注目したアノマリーもあります。それが「西暦の下一桁」によるサイクル論です。これは、西暦の末尾の数字によって、その年の相場に特定の傾向が現れるというものです。
特に有名なのが「7の年のジンクス」です。過去を振り返ると、7のつく年には歴史的な金融危機や暴落が集中しています。
- 1987年:ブラックマンデー
- 1997年:アジア通貨危機
- 2007年:サブプライムローン問題が表面化(翌年のリーマンショックへ)
もちろん、これはあくまで経験則ですが、不思議なほど符合する事実に、多くの市場関係者が意識せざるを得ないアノマリーとなっています。

2026年「6の年」に機関投資家が警戒する理由
では、今年2026年はどうでしょうか。このアノマリーによれば、「6の年」は「前年の上昇サイクルが秋まで続き、その後急落する」傾向があるとされています。2025年の力強い上昇相場を引き継ぎ、2026年も秋口までは堅調に推移するものの、年後半に大きな調整が来るかもしれない、というシナリオです。
単なるジンクスと片付けるのは簡単ですが、興味深いことに、機関投資家の間でも同様の見方が出ています。モルガン・スタンレーの著名ストラテジストであるマイク・ウィルソン氏は2026年11月2日のレポートで、S&P500が2027年中盤には8,500ポイントに達する強気見通しを示しつつも、短期的には調整が最終局面にあり、年末までに一時的に7,100〜7,200ポイントへ下落する可能性に言及しています。

この背景には、高止まりする金利や、過熱したAI関連株への利益確定売り圧力といったファンダメンタルズ上の理由があります。「6の年のアノマリー」は、こうした現実的なリスクを、経験則という形で私たちに警告していると解釈できるかもしれません。2026年秋以降は、特に信用取引などリスクの高いポジション管理に注意が必要と言えそうです。
持ち帰りメモ④:2026年秋以降は、「6の年」のアノマリーを念頭に、信用取引などリスクの高いポジションを縮小し、相場の急変に備える意識を持つ。
第5章:信じるか信じないか?天体の動きと相場「アストロジー」
この章のポイント
- 新月・満月のタイミングで相場が転換しやすいという説
- 「水星逆行」の期間は相場が反転・混乱しやすい
- 2026年は10月〜11月が金星・水星の逆行期間
満月で売り、新月で買う?ビットコインと月の満ち欠け
最後に、最もオカルト的で、科学的根拠は全くないものの、一部のトレーダーが密かに意識していると言われる「アストロジー(占星術)」のアノマリーを紹介します。「信じるか信じないかは、あなた次第です」という世界の話です。
代表的なものが、月の満ち欠けと相場の関係です。具体的には、新月や満月のタイミングで相場のトレンドが転換しやすいという説があります。チャート分析ツールのTradingViewには、月の満ち欠け(ムーンフェイズ)を表示する機能が標準で搭載されており、一定数の利用者がいることを示唆しています。

上のビットコインのチャートを見ると、不思議なことに満月(黒丸)のタイミングで価格が天井をつけ、下落に転じている例が散見されます。もちろん常に機能するわけではありませんが、重要な売買判断の際に、こうした天体のサイクルを参考の一つとして加えるトレーダーもいるのです。
2026年の「水星逆行」はいつ起きるか
もう一つ有名なのが「水星逆行」です。これは地球から見て水星が逆向きに動いているように見える期間のことで、占星術の世界では「コミュニケーションの混乱」や「計画の遅延」などが起きやすいとされています。相場においては、トレンドが反転したり、予期せぬ乱高下が起きやすい時期として警戒されます。
2026年の水星逆行と、より影響が強いとされる金星逆行の期間は以下の通りです。
- 水星逆行:2/26〜3/21、6/30〜7/24、10/26〜11/15
- 金星逆行:10/3〜11/14
特に10月下旬から11月中旬にかけては、水星と金星の逆行が重なります。アノマリーを信じるならば、この期間は相場が荒れやすいため、大きなポジションを取ったり、衝動的な売買をしたりするのは控えた方が良い、ということになるでしょう。あくまでエンターテイメントとして、相場の多角的な見方の一つとしてお楽しみください。
持ち帰りメモ⑤:「水星逆行」の期間は相場が荒れやすいと心に留め、衝動的な売買は控える。あくまで話のタネとして。
私たち個人投資家はどうするべきか
ここまで5つのアノマリーを見てきました。これらは未来を予言する魔法の杖ではありませんが、多くの市場参加者が意識する「相場のクセ」です。この知識を武器に、明日からできることを4つにまとめます。
- Fear & Greed指数を確認する。大きな資金を投じる前には、市場が「恐怖」に傾いているかを確認しましょう。CNNのサイトなどで誰でも無料で確認できます。20を下回るような局面は、優良なインデックスや銘柄を仕込む好機です。
- 夏の投資は慎重に。「Sell in May」の格言通り、5月から9月頃までは株価が伸び悩む傾向があります。この時期は無理に利益を追うのではなく、秋以降の投資戦略を練るための勉強期間と位置づけるのも一案です。
- 年末ラリーに備える。10月頃に相場が調整した場合、それは12月の上昇に向けた絶好の仕込み場になる可能性があります。ただし、2026年は「6の年」のアノマリー通り、秋以降の急落リスクも囁かれています。機関投資家のレポートなどを参考に、慎重に判断しましょう。
- アノマリーを過信しない。アノマリーはあくまで過去の統計的な傾向であり、未来を保証するものではありません。ファンダメンタルズ分析やマクロ経済の動向を主軸に据え、アノマリーは判断材料の一つとして補助的に活用するのが賢明です。
もちろん過去の実績は将来のパフォーマンスを担保するものではございません。本記事で紹介した銘柄は業種の代表例であり、特定の銘柄の購入を推奨するものではなく、投資は自己責任でお願いします。
動画では実際のチャートや資料を見ながら解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
「6のつく年は秋以降に急落する」というアノマリーから連想を始めると、モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏が年後半の調整を警戒しているレポートに行き着きます。この背景には、高止まりする金利や、過熱したAI関連株への利益確定売り圧力があります。つまり、「6の年」のアノマリーは、2026年後半の金融政策と企業業績の綱引きという現実的なリスクを、経験則という形で我々に警告していると解釈できるのです。
私が学長を務めるマネトレ大学では、金融知識ゼロだった大学生が米国大手証券会社に入社し学んだ金融知識、ルーティンワークを集約した金融特化型の教育研修を行っています。無料の勉強会「元ゴールドマン・サックス証券 尾崎邦明式 資産10倍ロードマップ」はYouTubeの各動画の概要欄からお申し込みください。日々のマーケット解説や最新情報は、無料LINEでもお届けしています。まずは無料LINEにご登録ください。
参考情報:Morgan Stanley, Mike Wilson, “U.S. Equity Strategy: The Final Innings of the Correction”, 2026-11-02、CNBC, “Mike Wilson says the market correction is in its ‘final innings,’ sees S&P 500 at 8,500 by mid-2027”, 2026-11-02、CNN Business, Fear & Greed Index, 2026-11-04、Goldman Sachs, David Kostin, “U.S. Equity Strategy: Looking for Growth in 2026”, 2025-07-21、goisu.net, “惑星逆行カレンダー”, 2026-11-04、Yorkshire Post, “St Leger Festival 250th anniversary”, 2026-07-17、各種金融情報、Yahoo Finance 市場データ



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