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個人投資家が買えば買うほど株価が上がらない本当の理由をマネトレ大学学長が解説

2026年9月16日、米国の個人投資家のあいだで最も話題になった銘柄ランキングは、1位エヌビディア、2位マイクロン、3位ウィングストップ、4位ブロードコム、5位メタ。半導体とAI関連に、なぜかチキンウィングのチェーン店が混ざる。この「ノイズ混じり」のランキングこそ、いまの米国株市場を動かしている主役が誰なのかを物語っています。

ゴールドマン・サックスの推計では、米国株の売買代金に占める個人投資家の比率は約30%。2026年6月には個人の売買代金が過去最高を更新し、その額は2021年1月のミーム株ブーム時を1割上回りました。市場データではさらに高く、2026年の年初来で約35%という水準が続いています。日本でも個人の売買シェアはおよそ25%。個人投資家はもはや脇役ではなく、相場を動かす当事者です。

それなのに、個人が買えば買うほど株価は上がらない。この不思議な現象が起きる理由を、マネトレ大学学長の尾崎が運営するYouTubeチャンネル「おーちゃん【元外銀マン】」でも解説しました。この記事では、

  • 2021年の「ゲームストップ騒動」で個人投資家が手にした力と、その後に起きたこと
  • 売買の3割超が個人になった市場で、なぜ個人の買いは株価を押し上げられないのか(ゴールドマン、JPモルガン、Cboe、Vanda Researchの最新レポートから)
  • ミーム株・話題株の時代に、個人投資家が生き残るための3ステップ「順張り・押し目・反転警戒」

この3つを軸に、今週の米国市場の動き(米10年債利回り5.1%、マイクロン決算前夜)も織り込みながら、マネトレ大学学長として日々マーケットを読み解いている私の視点で徹底解説していきます。

2021年ゲームストップ騒動:個人投資家が「力」を知った2週間

話は2021年1月にさかのぼります。ゲーム販売店のゲームストップは、コロナ禍で店舗が閉まり、ヘッジファンドから「潰れる会社」として大量に空売りされていました。ところが米国の掲示板レディットの「ウォールストリートベッツ」に集まった個人投資家が、一斉に買い向かったのです。

結果、2020年4月に2.57ドルだった株価は、2021年1月28日に日中高値で483ドルまで駆け上がりました。上昇率にして約188倍、パーセントで言えば+18,693%です。空売りしていたヘッジファンドのメルビン・キャピタルは巨額の損失を出し、のちに解散に追い込まれました。

図1:2021年ゲームストップの株価推移(2022年の株式分割前ベース)。1月12日に約20ドルだった株価が2週間で483ドルに達し、取引制限の翌日から急落した
図1:2021年ゲームストップの株価推移(2022年の株式分割前ベース)。1月12日に約20ドルだった株価が2週間で483ドルに達し、取引制限の翌日から急落した

しかし物語はそこで終わりません。1月28日、個人投資家の多くが使っていた証券アプリのロビンフッドが、ゲームストップなど一部銘柄の「買い」ボタンを突然停止しました。売ることはできるのに買えない。株価は翌日から急落し、高値で乗った個人投資家が大きな損失を抱えました。ロビンフッドは2021年6月、この件を含む一連の問題で米金融業規制機構(FINRA)から約7,000万ドル(当時のレートで約77億円)という当時としては過去最大の制裁金を科されています。

この事件が残した教訓は2つです。ひとつは、個人投資家が結束すれば機関投資家を追い詰められること。もうひとつは、相場の「土俵」そのものを支配しているのは個人ではないということ。この2つは今も変わっていません。

個人投資家は「クジラ」になった:売買の3割超、資産1,800兆円

2021年当時、米国株の売買代金に占める個人の比率は約24%でした。それが今は3割を超え、年初来では約35%という水準です。ゴールドマン・サックスが2026年5月に出したレポートによれば、米国の個人投資家が自己運用する証券口座の資産は12兆ドル(約1,800兆円)。米国上場企業の時価総額のおよそ1割に相当します。同社で執行サービス部門を率いるボビー・モラビ氏は、個人投資家を「クジラ(whales)」と表現しました。かつては機関投資家を指したこの言葉が、いま個人に向けられているのです。

図2:株式売買に占める個人投資家のシェア。米国は2021年のピーク24%を超え、2026年は30〜35%で推移。日本も約25%
図2:株式売買に占める個人投資家のシェア。米国は2021年のピーク24%を超え、2026年は30〜35%で推移。日本も約25%

JPモルガンのストラテジスト、ニコラオス・パニギルツォグル氏らも2026年5月のレポートで、個人マネーの復活が米国株を押し上げていると分析し、年末にかけても個人の資金流入が相場を下支えするとの見方を示しました。ゴールドマンも、個人の売買代金が4月中旬から28%増え、個人に人気の銘柄群が同じ期間に29%上昇したと指摘しています。数字だけを見れば、個人の買いは確かに株価を動かしているように見えます。

ただし同じレポートには、見落とせない一文があります。「個人投資家の参加が増えると、株価がファンダメンタルズ(業績などの実態)を織り込む動き方が変わる可能性がある」。実際に決算が期待を下回った銘柄は、その後の下落が以前より大きくなっているのです。さらに信用取引の残高は顧客資産の1.8%と、2021年の高値と同じ水準まで膨らんでいます。個人は「クジラ」になったと同時に、レバレッジを効かせて、決算に敏感に反応する相場を自ら作り出しています。

「今日中に結果が出る」0DTEオプションが個人マネーの主戦場に

個人投資家の売買が増えたと言っても、その中身は2021年と大きく違います。最大の変化は0DTE(ゼロ・デイズ・トゥ・エクスピレーション)、つまり当日満期のオプション取引です。2021年には個人のオプション取引に占める0DTEの比率は約13%でしたが、2026年上期には約48%まで拡大しました。

図3:左は個人のオプション取引に占める0DTEの比率(2021年→2026年上期)。右はS&P500指数オプションの出来高に占める0DTEの比率。Cboeによれば2026年5月に65%に達した
図3:左は個人のオプション取引に占める0DTEの比率(2021年→2026年上期)。右はS&P500指数オプションの出来高に占める0DTEの比率。Cboeによれば2026年5月に65%に達した

オプション取引所のCboeが2026年7月に公表した第2四半期の決算資料でも、S&P500指数オプション(SPX)の出来高に占める0DTEの比率は2026年5月に65%と過去最高を更新しました。SPXの1日平均出来高は510万枚と前年比40%増、そのうち0DTEは310万枚で48%増。しかも同社は、個人の0DTE取引の伸びを後押しした要因として、2026年6月に撤廃された「パターン・デイ・トレーダー規制」(少額口座の日計り回数制限)を挙げています。少額の個人がさらに参入しやすくなったということです。

なぜ0DTEなのか。今日買って今日結果が出るからです。数十ドルで買ったオプションが数時間で10倍になることもあれば、ゼロになることもある。ウォールストリートベッツやポリマーケット(予測市場)、X(旧ツイッター)で「今日の勝負」が共有され、勝った人のスクリーンショットだけが拡散される。こうして個人マネーは、株そのものよりも「今日の値動き」に賭ける場所へ流れ込んでいます。

なぜ個人が買っても株価は上がらないのか:3つの構造

ここまでの材料を並べると、答えが見えてきます。個人投資家がいくら買っても株価が上がらない理由は、個人が「弱い」からではありません。個人の買いが構造的に「吸収される」仕組みができあがっているからです。

① 個人の注文は「市場」に届く前に吸収される

ゴールドマンのレポートが指摘するように、個人の注文の大半は取引所ではなく、シタデル・セキュリティーズなどの「ホールセラー」と呼ばれる業者に回されて執行されます。個人が1万株買っても、その注文は業者の在庫と相殺され、取引所の板をほとんど動かしません。個人が買った事実は株価に「圧力」として伝わりにくいのです。

② 個人は「話題になってから」買う

9月16日の話題ランキングを思い出してください。ランキングに載る時点で、その銘柄はすでに上がっているか、すでに急落しています。個人が買うのは常に「動いた後」です。機関投資家やアルゴリズムは、話題化を「売り場」として利用します。個人が買えば買うほど、機関には売る相手が増える。これが「買えば買うほど上がらない」の正体です。

③ 個人マネーは「一つの相場観」を持たなくなった

個人投資家の売買データを追跡するVanda Researchは2026年7月、興味深い分析を出しました。個人の売買回転率は2012年以降の99.7パーセンタイルという記録的な高さにあるのに、株式の純買い越し額はコロナ以来の低水準だというのです。同社はこう表現しています。「個人投資家はもはや一つの相場観を表現していない。水面下で何十ものテーマ別の見方を表現している」。エネルギー、暗号資産、半導体、宇宙関連、そして予測市場やオプションへと資金が目まぐるしく回転し、一つの銘柄を持ち続ける力にはなっていない。だから個人の売買は増えても、株価を持ち上げる「厚み」にはならないのです。

9/16の話題ランキングと今週の相場:マイクロン+587%、ウィングストップ▲65%

では、話題になった5銘柄はこの1年でどう動いたのでしょうか。

図4:9/16の話題ランキング上位銘柄の1年パフォーマンス(1年前=100、対数目盛)。マイクロンは約6.9倍、エヌビディアは+26%、メタは+5%でS&P500(+16%)を下回る
図4:9/16の話題ランキング上位銘柄の1年パフォーマンス(1年前=100、対数目盛)。マイクロンは約6.9倍、エヌビディアは+26%、メタは+5%でS&P500(+16%)を下回る

マイクロンは1年で+587%、株価は157ドルから1,080ドルへ。AI向けメモリー需要でメモリー価格が1年で5〜7倍になったとインテルのCEOが語るほどの品不足が背景です。9月30日には2026年度の本決算が控え、市場は売上高が前年比3.5倍の約1,300億ドル、次の四半期の売上高ガイダンスが567億ドルという桁違いの数字を見込んでいます。一方、エヌビディアは+26%、ブロードコムは+5%、メタは1年でようやくプラス圏に戻ったところ。「話題の銘柄」といっても中身はバラバラで、全部を一緒に買うと平均的にはS&P500に負けます。

図5:ウィングストップ(WING)の1年チャート。1月の276ドルから98ドルまで約65%下落。下落トレンドの途中で「もう底」と買った人は何度も裏切られた
図5:ウィングストップ(WING)の1年チャート。1月の276ドルから98ドルまで約65%下落。下落トレンドの途中で「もう底」と買った人は何度も裏切られた

そしてウィングストップ。1月の276ドルから9月24日には98ドルまで約65%下落しました。8月の米外食チェーンの客数はプレイサーAIの調べで前年比2.4%減、ガソリン価格の高止まりと値上げで外食が敬遠され、TDコーウェンは9月11日に目標株価を120ドルに引き下げています。それでも話題ランキングの3位に入ったのは「ここまで下がれば反発するはず」と考える個人の逆張りが集まったからです。図5を見れば分かる通り、この銘柄は4月、6月、9月と3回「反発」して3回とも切り下げました。下落トレンドで逆張りをすると、何度でも裏切られるのです。

そして今週の相場全体。9月24日には米10年債利回りが5.11%と2007年以来の高水準を付け、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が年内の追加利上げの可能性に言及、CME FedWatchでは10月の利上げ確率が71%まで上昇しました。S&P500は7,704ポイントで高値圏にとどまっていますが、50日移動平均線を上回る銘柄は29%しかありません。金利上昇局面で真っ先に売られるのは、個人に人気の高成長株です。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントも9月のレポートで、米国株のバリュエーションが歴史的な上位1〜2割の水準にあり、こうした局面では調整が起きやすいと注意を促しています。

ミーム株時代を生き残る3ステップ:順張り・押し目・反転警戒

それでも話題株で稼ぎたい。そう考える人に、動画で解説した短期売買の「型」をお伝えします。保有期間は5〜20日。この型を守れるかどうかで、個人投資家の勝ち負けは大きく分かれます。

図6:「個人が買っても上がらない」相場で生き残る3ステップ。上昇トレンドの銘柄だけを、押し目で買い、5〜20日で機械的に手仕舞う
図6:「個人が買っても上がらない」相場で生き残る3ステップ。上昇トレンドの銘柄だけを、押し目で買い、5〜20日で機械的に手仕舞う

① 順張り:上がっている銘柄だけを買う

ウィングストップのような「安くなったから買う」は禁物です。高値と安値をともに切り上げている上昇トレンドの銘柄に絞ります。日本のメタプラネットが3倍になった局面も、乗れたのはトレンドの途中で順張りした人だけでした。

② 押し目:話題になった日に飛びつかない

ランキングに載った日の高値を追いかけるのが、個人が最も損をするパターンです。2〜3日の調整を待ち、下げ止まりを確認してから入る。上昇トレンドの中の一時的な下げが「押し目」であり、下落トレンドの中の反発は押し目ではありません。

③ 反転警戒:5〜20日で機械的に手仕舞う

ミーム株は上がり切ったら急落します。ゲームストップも、ロビンフッドが買いボタンを止めた翌日に半値になりました。買う前に損切りラインと保有期限を決め、20日を超えて持ち越さない。「まだ上がるかも」と思った瞬間が、機関投資家の売り場になっています。

私たち個人投資家はどうするべきか

最後に、今回の内容を踏まえて個人投資家が取るべき行動をまとめます。

  1. 資産形成の土台はインデックスの積み立てで作り、話題株は「別枠」の資金で5〜20日の短期売買に限定する
  2. 話題ランキングは「買う銘柄」ではなく「機関が売り場にしている銘柄」のリストとして読む
  3. 0DTEオプションは「今日の勝負」に資金を吸い取られる仕組み。手を出すなら失っていい金額だけ
  4. 米10年債利回り(今は5.1%)とFedの利上げ確率を毎朝確認する。金利上昇局面は個人に人気の成長株が真っ先に売られる
  5. 9月30日のマイクロン決算のような「期待が極端に高いイベント」は、結果が良くても売られる可能性を織り込んで臨む

個人投資家は「クジラ」と呼ばれるほど大きな存在になりました。しかし、大きくなった個人マネーを最も上手に利用しているのは、依然として機関投資家とアルゴリズムです。この構造を知った上で参加するのか、知らずに参加するのか。その違いが、ミーム株時代の資産形成に静かに差をつけていきます。

もちろん過去の実績は将来のパフォーマンスを担保するものではございません。本記事は特定銘柄や特定通貨の購入を推奨するものではなく、投資は自己責任でお願いします。

動画では実際の話題ランキングやチャートを見ながら解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

「個人が買っても上がらない」という一つの違和感から、ホールセラーの仕組み、0DTEへの資金流出、機関投資家の売り場、そして金利上昇局面の成長株の弱さまで1本の線でたどり着く。この「連想ゲーム」ができるようになった瞬間、話題株の急騰を見ても冷静に「今どの局面か」を判断できるようになります。

私が学長を務めるマネトレ大学では、金融知識ゼロだった大学生が米国大手証券会社に入社し学んだ金融知識、ルーティンワークを集約した金融特化型の教育研修を行っています。無料の勉強会「元ゴールドマン・サックス証券 尾崎邦明式 資産10倍ロードマップ」はYouTubeの各動画の概要欄からお申し込みください。日々のマーケット解説や最新情報は、無料LINEでもお届けしています。まずは無料LINEにご登録ください。

参考情報:Goldman Sachs「Retail investors hold equity assets equal to 10% of U.S. market cap」(2026年5月)、Goldman Sachs 個人売買代金レポート(2026年7月)、JPMorgan「Retail Revival Adds Fuel to US Stocks」(Bloomberg、2026年5月28日)、Cboe Global Markets 2026年第2四半期決算資料・State of the Options Industry(2026年7月)、Vanda Research/VandaTrack(2026年7月)、Goldman Sachs Asset Management「US Market Pulse」(2026年9月)、TheStreet・Charles Schwab 市場レポート(2026年9月24日)、Benzinga(2026年9月16日)、Yahoo Finance

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プロフィール

こくチーズプロフィール

・幼少期よりヨーロッパ、アジアを中心に海外を周る。


・京都大学で建築のデザインを学び、図面制作事業(現Architech株式会社)を設立。


・首席で卒業後ゴールドマンサックス証券の当時最先端であるアジア株アルゴトレーダーとして勤務。1日に数100億円もの取引をさばく。


・2020年に独立後、株、為替、不動産、太陽光、マイニング、海外信託、ヘッジファンドなど様々な投資を行いながら法人向け運用&節税、個人向け資産形成&資産運用コンサルティング業を行う。


・関西と関東で教育の先生としても活躍。


・海外の金融の世界を見てきたならではの情報と分析をたまにブログに投稿している。

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